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2012年4月22日

失敗を生かすノート

 「年棒2億円で契約更改――を見逃しそうになり冷や汗」「見出し『阪神  乱打線を制す』――にだまされてしまった」「守備の乱れが失点に絡み、痛い黒星を献上した――これでは頂戴する側も引いてしまう!?」「競技生活も晩年の30歳になってからの五輪挑戦――言葉の持つ本来の意味とは違う」……。

大阪本社校閲グループの各パートには、その日の担当者が作業終了後に感じたことを書く「連絡ノート」が置いてあります。記事中の固有名詞や数字、事実関係の間違いを正したり、逆に力及ばずスルーしてしまったりした例のほか、誤字や気になった言葉の使い方などについて記述するもので、次回に同様のミスを繰り返さないため、お互いに注意を喚起し合うことを主眼としています。

冒頭の各例はスポーツ面用のノートから抜粋した一部ですが、いずれもこれまで幾度となく指摘されてきた「間違いの定番」と言えます。まず「年棒」ではなく「年俸」。「ねんぽう」を「ねんぼう」と誤読することから生じたミス?  次は「乱打戦」が正解。変換ミスにはいつも泣かされます。負けの場合「白星を献上した」でないと、おかしなことに。ここでは「痛い黒星を喫した」くらいが適切でしょう。また「晩年」は、亡くなった人の一生を振り返って死に近い時期で、生きている人や選手生活の終盤について言うのはふさわしくありません。

校閲記者にとって、記録・成績などの数字や選手名が目白押しのスポーツ面では、必然的にそれらのチェックが最優先事項。ただ「そちらに気を取られていて……」という理由で、おかしな日本語を世に送り出すわけにはいきません。久しぶりに過去の連絡ノートを繰って、スポーツ記事特有の間違えやすい傾向にある言葉やフレーズを把握しておくことが、ミスを防ぐ近道だと再認識しました。
【宇治敏行】